Q&A 原子力空母母港の危険性

原子力空母に関するご質問への回答(2012年5月版)

(原子力ドンキホーテ 藤原節男様・作成) こちらから>>(PDF形式ファイル)


※以下のQ&Aは当会作成のものです。

Q1 米海軍が横須賀基地を、2008年に原子力空母の母港にするという計画があるって、本当ですか?

A1 本当の話です。

05年10月28日に日米両国政府は、現在米海軍横須賀基地を母港としている重油を燃料とする通常型空母キティホークの後継艦として、2008年横須賀基地にニミッツ級の原子力空母を配備すると発表しました。私たちはこの原子力空母の横須賀母港計画をストップするため、05年3月地元及び全国から寄せられた30万筆を超える署名を横須賀市長と神奈川県知事に提出し、横須賀市長も周辺自治体も神奈川県知事も、反対声明をしてきました。にも係わらず、日米両国政府は、私たち国民や、地元自治体の切実な願いを無視して、危険な原子力空母の配備を一方的に決定して、押しつけようとしているのです。

 

Q2 原子力空母とは、どのようなものですか。原発とどちらが危険なのでしょうか。

A2 原子力空母は原子炉を積んだ航空母艦で、陸上の原発よりはるかに危険なものです。

原子力空母とは、原子炉を積み、その核分裂反応による熱で作った水蒸気でタービンを回して運航する航空母艦です。米海軍のニミッツ級原子力空母の出力は、発電炉にすると約30万KWで、福井美浜原発の原子炉に相当する規模だといいます。

原子力空母動力回路


米海軍の艦船原子炉は陸上に設置された原発と比較して、

  1. 狭い船体内で炉心設計に余裕が少ない
  2. 放射能防護の為の格納容器が存在しない
  3. 船の上で絶えず振動衝撃にさらされる
  4. 海難事故による原子炉の破損の可能性
  5. 軍事活動の為無理な出力調整を強いられる
  6. 原子炉と高性能火薬との同居
  7. 交戦による炉の破壊の可能性
  8. 高濃縮ウランの使用 

等の危険性を増大させる要素のため事故の危険性がはるかに高いと指摘されています。

99年11月には原子力空母ステニスが、母港のサンディエゴ湾内で座礁事故の為、冷却水循環ポンプが故障して、原子炉が2基とも緊急停止するという大事故寸前の事態を起こしているのです。

 

Q3 横須賀基地が原子力空母の母港になると今よりどのように危険になるのでしょうか。

A3 原子力空母が横須賀基地を母港とすると今より危険性は遙かに増大します。

原子力空母が横須賀基地を母港化すると年間の半数近く、大規模の原子炉をもつ空母が私たちの住んでいる市街地から僅かの距離に停泊することになります。そして原子力空母の『原子炉の修理活動』が横須賀基地内で行われ、それに伴って、原子炉から放射能を帯びた機材、放射性廃棄物、放射性物質を含む一次冷却水等が基地内の『放射能作業施設』に搬出され、その中で修理作業や放射性物質処理作業が行われます。

その結果、放射能漏れ、作業員の被曝事故が確実に発生し、また放射性汚染物質が私たちの周囲の環境に放出され、何年、何十年後に私たちが、恐ろしいガンなどにかかるおそれが、高くなります。

原子炉の修理作業に伴い、原子炉停止時、修理活動中そして修理後の出力テスト時等に原子炉事故が起こる確率も飛躍的に高くなります。さらに原潜も、頻繁に放射能作業施設で修理される事態となるでしょう。航海中に発生した原子炉事故を修理するために、放射能を出した危険な状態のまま、原子力艦船が横須賀に帰港することも考えられるのです。

 

Q4 もし横須賀基地で原子炉事故が起こったら、私たちにどのような被害が出ますか。

A4 私達1人1人、私たちの街と、日本にとって取返しの付かない被害が発生します。

死亡者分布カリフォルニア大のジャクソン・デイビス教授の研究によると、原子炉の放射性物質は放射能雲となって運ばれて風下の数十キロに降下し、一帯の住民は死の灰を吸入し、また地表を汚染します。南風の吹く日ならば、1時間以内に横浜、東京を含む首都圏の数千万人もの人々が、放射能汚染にさらされることになるのです。横須賀でも、基地労働者だけではなく、周辺に勤務居住する多くの市民、特に、子供、女性、老人が、避難もできず被曝することになりかねません。放射性物質が体内に入ると、体内に止まって放射線を出し続けるため、白血病、甲状腺ガン、脳腫瘍、肺ガン等を起こし、さらに遺伝子を傷つけるため、遺伝障害を起こし、胎児、子供等次の世代にまで被害は及びます。同教授は、放射能の被曝による死者は、遺伝障害も含めて数万人にのぼるだろうと推定しています。

さらに汚染された土壌や建物も放射線を出し続けるため、汚染除去のため、長期間の時間と膨大な費用がかかり、何年何十年と人が住むことはできなくなります。汚染された地域のマイホームにも住むことができなくなり、工場も、商店も、農業も漁業も操業できなります。同教授は放射能の被爆による経済的被害は数兆円にのぼると推定しています。

 

 

 

 

 

Q5 危険な原子力空母の母港はストップするためにはどうしたらよいのでしょうか。

A5 私たち市民と、地元自治体が力を合わせれば、危険な母港計画はストップできます。

原子力空母の横須賀母港化が、08年の唯一の選択肢ではありません。
米軍の星条旗新聞自体が、

  1. 空母ケネディーの配備
  2. 空母キティホークの艦歴延長
  3. 原子力空母受入への日本に対する説得
  4. グァムその他への空母の移転

の4つの選択肢を示しているのです。
そして米海軍が横須賀を原子力空母の母港化するためには、原子力空母母港のための浚渫工事等が必要で、横須賀市長は港湾法に基きそれを不許可にする権限があるのです。

また現在の日米間での取決めには、原子炉を修理しない、放射性物質を取出さない等が定められており、その変更を許さないために、神奈川県知事の行動も非常に重要です。

さらに日本政府、小泉首相の米国への毅然たる原子力空母母港ノーの態度が必要です。

私たち『原子力空母・市民の会』は、みなさんと一緒になって、さらに多くの署名を集めて横須賀市長と神奈川県知事に原子力空母ノーの積極的な行動を求め、日本政府、米国政府に対して、原子力空母母港計画の断念を求めていきます。私たちの将来の安全を守るためみなさん、原子力空母母港計画ストップの運動にご参加、ご協力、ご支援下さい。

 

Q6 日米政府は『米海軍の原子力艦は安全である、事故を起こしたことがない』と主張していますが・・・

子力艦は原子炉を狭い、衝撃に晒される船の上に搭載したもので、原発に比べはるかに危険な存在です。米海軍のいう事故とは、破滅的な原子炉事故のことであって、これまでに実際に多数の米国内の母港等での放射能漏れ、作業員や兵隊の被曝事故、大事故寸前の事態を起こしてきたことが、米国の団体の調査等によって、明らかになっています。99年11月には原子力空母ステニスが母港のサンディエゴ湾内で座礁事故の為、冷却水循環ポンプが故障して原子炉が2基とも緊急停止するという、大事故寸前の事態を起こしているのです。横須賀で放射能漏れが起これば、作業員が被曝をしたり、周囲の住民が長期的にみて健康被害を受けますし、ジャクソンデイビス教授の研究によれば、原子炉事故が起こった場合、死の灰が横浜、東京と3000万人もが住む首都圏に降下して、何万人もの人が死傷する危険に晒されることになるのです。

 

Q7 日米政府は『日米間で約束された手続きを遵守する』と主張していますが・・


その前提たる原子力艦船寄港に関する合衆国政府の声明自体が、日本政府への原子炉についての一切の技術的情報を提供しないし、原子力艦船への立ち入りも認めないという、情報非公開が原則という重大な問題が抱えています。従って、日本政府は米軍の原子炉についてチェックすることもできず、トラブルが起こっても通報される保障もないのです。現に米海軍は、横須賀の原潜部隊で、原子炉事故が起こった場合を想定しての対策マニュアルをもっていますが一切情報公開せず、横須賀市との原子力艦船防災協定も全く拒絶したままです。

陸上の原発でさえ事故を起こし完全な情報公開が求められている時代に、米国が原子炉の安全を保障するというのならば、なぜ堂々と情報の公開ができないのでしょうか。

 

Q8 日米政府は『横須賀で原子力空母の原子炉は停止する、修理はせず本国で行う』と主張していますが・・・

まず原子炉を停止することは何ら安全の保障とは関係がなく、却って原子炉を停止させた時、修理中、停止後起動させた時が、原子炉事故の危険性が高いのです。特に原子炉を停止させても、直前まで核分裂反応を行っていた原子炉は相当量の崩壊熱が発生し原子炉の冷却水を強制的に循環させないと、その熱が炉心を損傷してしまうおそれがあるからです。その危険を防ぐために、埠頭に高電圧の電力と、相当量の純水の供給能力が必要となるのです。また原子炉の修理をしないという点も、米海軍の原子力空母母港基準によれば、放射性物質を港内で原子力艦船から搬出する原子炉の一定レベルの修理行為が、必ず母港でできなければならないことになっています。横須賀を米海軍が原子力空母の母港とする限り、いつかは必ず修理行為が行われ、そうなれば放射性汚染物質が基地内に搬出され、放射能取扱作業が行われ、それが汚染、事故をもたらす危険を飛躍的に増大させるのです。 

 

(そして以下は空母が安全保障上必要との立場の方にも是非知って貰いたい事実です。)

 

Q9 日米政府は『空母のプレゼンスが安全保障上必要である、原子力空母の方が、性能が優れている』と主張していますが・・・

98年の米国議会会計検査院のレポート『通常型空母 と原子力空母 対費用効果』自体が、湾岸戦争時の実際の空母の行動を元に、実証的に、

  1. 原子力空母は通常型空母に比べて、修理期間が長く、固定的なので、前方展開できる期間がむしろ短い。
  2. 緊急展開のスピードは、燃料補給の必要性がないから原子力が速いと言われているが、随伴艦まで原子力ではないから機動部隊全体では同じ、洋上補給能力が向上しているので大差なし。
  3. 原子力の方が、航空燃料や弾薬を多く積めるというが、実際には原子力空母も航空燃料や弾薬を補給船に頼っていた。
  4. 原子力の方が、加速が速いから、条件変更に対応しやすく着艦しやすいというが、それも相対的な問題にすぎない。

という分析結果に基づいて、通常型空母と原子力空母は軍事的に優劣はないが、原子力空母はコストが高くかつ危険である、と指摘しているのです。

 

Q10 日米政府は『通常型空母は老朽化しており、米海軍は総ての空母を原子力とする方針である』と主張していますが・・・


問題は2008年の時点で日本国民が反対している原子力空母をどうしても配備しなくてはならないのか、そうでない選択肢はないのか、なのです。空母キティホークの他に米海軍はもう1隻通常型空母ケネディーを保有しており、米国議会は、海軍にケネディーの退役を凍結し、艦歴延長工事を行うことを求める国防認可法案(上院案)を審議していて、そこでは日本国民が原子力空母配備に反対しているという事情が1つの有力な理由とされています。そうなれば2018年まで通常型空母ケネディーは十分に行動可能で、横須賀に配備するという選択肢がある、という状況を全く無視した、日本国民の願いより、米海軍の希望のみを優先させた、全くの乱暴な議論なのです。そして仮に空母ケネディーが一時退役扱いとなったとしても、米海軍は退役した空母をすぐには解体せずに係留しており、日本国民の願いを尊重して、空母の海外母港を真に両立させようとしたら、いつでも現役復帰させることも、可能なのです。

 

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