政府の中央防災会議(会長=森首相)は十二日、防災基本計画の「原子力災害対策編」について、原子力事業者に対し災害発生から十五分以内に国や自治体などの関係部署に報告することを義務づけるなどの修正案をまとめた。茨城県東海村の「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で昨年九月に起きた臨界事故を踏まえた措置で、今月末に正式決定する。
昨年十二月に成立した原子力災害対策特別措置法(原子力防災法)の施行に合わせて行う今回の修正は、同法の運用手引となる。
修正案では、原子力事業所などの事故で、敷地境界で毎時五マイクロ・シーベルト以上の放射線が検出された場合、首相官邸や、科学技術庁などの関係省庁、自治体、警察や消防機関などに十五分以内で文書をファックスすることを義務づけた。これまでは、事業者は関係機関との「緊密な連携の確保に努める」とだけ書かれていた。
JCOの臨界事故では、第一報が科技庁にあったのは事故発生から約四十四分後、首相官邸の小渕前首相が連絡を受けたのはさらにそれから一時間も後だった。国の初動対応が遅れたために、東海村長は国や専門家の助言を受けられないまま、住民避難を決断した。
また、これまでの防災基本計画では、原子力事業所での事故のみを想定していたが、「不測の事態に備える」という計画の基本方針に従い、初めて核燃料運搬中の事故も想定した対応を記している。
このほか、米軍原子力艦船が寄港する横須賀市などが求めていた原子力艦船を想定した防災計画の策定については、「関係自治体の防災計画において、その対応に留意するものとする」として、自治体が地域防災計画を作る場合に協力する姿勢を初めて示した。
米軍艦船については、「原子力艦船の事故は起こりえない」との認識から、原子力災害法の対象から除外されており、横須賀市などはこれを不満として独自の計画策定を進めていた。政府が従来の方針を転換したことで、今後、自治体との間で具体策の協議が進む見通しだ。
(読売新聞 2000−5−12)