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新聞・マスコミ報道 2000年

2000年5月26日

工事中に崩落事故 有害物質流出か

米軍横須賀基地12号
 基地機能の拡大に伴い、環境汚染対策工事が行われている在日米海軍横須賀基地の12号バースで、土砂の崩落事故が発生、有害物質が海に流れ出た可能性のあることを二十五日、横浜防衛施設局が明らかにした。同局は汚染被害の把握を急いでいるが、同バースが水銀や鉛などに汚染されている実態を、米国の情報公開法に基づいて公表、工事に反対している市民団体は態度を硬化させている。横須賀市も事態を重視、横浜防衛施設局に厳重注意した。
 横浜防衛施設局によると、事故があったのは今月十九日午前十時ごろ。海中に遮水壁を設置する工事中、12号バース先端に設置されていた足場の真下の石積み護岸(幅約六十メートル)が、高さ約三メートル、幅約二十メートルにわたって崩れ落ちた。けが人はなかったが、海中に流出した土砂は約百立方メートルに上った。
 同局は建設部に特別チームをつくって調査に乗り出す一方、事故の当日に横須賀市や地元漁協に連絡したという。バース周辺には海水汚濁を防止する膜が張られていたが、事故を受けて内側に長さ約六十メートルの緊急膜を新たに設置した。さらに、崩落個所にはH形鋼と鉄板を設置して、崩落の再発を防ぐ措置をとった。
 潜水調査では、防止膜より外側では土砂は確認されなかったという。流出した土砂は順次、回収している。
 12号バース一帯の汚染問題は、横須賀の市民団体・NEPAの会が九五年三月、入手した米公文書で明らかにした。九七年八月から実施された国の環境調査でも、汚染が確認された。
 今回、土砂の崩落があった場所の周辺でも、最大で環境基準値の十九倍の総水銀や二・三倍の鉛など重金属が検出されている。
 このため、崩落した土砂も汚染されている可能性が高いとして、防衛施設局は周辺の五カ所で土壌と海水を採取し、民間の分析会社に分析を委託している。分析結果は、早ければ二十六日にも判明するという。
 横浜防衛施設局の石井猛次長は「崩落した石積み護岸は旧日本海軍時代から使われており、崩れるとは思わなかった。現在、崩落原因の究明中だが、環境汚染対策の工事だけに、事前に担当者には慎重に進めるよう注意していた。初歩的なミスであり、きわめて遺憾だ」と話している。
 横須賀基地の12号バースは、「大型空母を停泊させるには短い」とする米海軍の意向を受けて延伸計画がある。現在、行われているのはその前の汚染土壌の封じ込め措置。予算は約二十九億円で終了後に延伸工事に着手する。バースは米軍施設だが、費用は日本側がすべて負担する。

(神奈川新聞 2000−5−26)

2000年5月12日

原発事故発生15分内の通報義務づけ

 政府の中央防災会議(会長=森首相)は十二日、防災基本計画の「原子力災害対策編」について、原子力事業者に対し災害発生から十五分以内に国や自治体などの関係部署に報告することを義務づけるなどの修正案をまとめた。茨城県東海村の「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で昨年九月に起きた臨界事故を踏まえた措置で、今月末に正式決定する。

 昨年十二月に成立した原子力災害対策特別措置法(原子力防災法)の施行に合わせて行う今回の修正は、同法の運用手引となる。

 修正案では、原子力事業所などの事故で、敷地境界で毎時五マイクロ・シーベルト以上の放射線が検出された場合、首相官邸や、科学技術庁などの関係省庁、自治体、警察や消防機関などに十五分以内で文書をファックスすることを義務づけた。これまでは、事業者は関係機関との「緊密な連携の確保に努める」とだけ書かれていた。

 JCOの臨界事故では、第一報が科技庁にあったのは事故発生から約四十四分後、首相官邸の小渕前首相が連絡を受けたのはさらにそれから一時間も後だった。国の初動対応が遅れたために、東海村長は国や専門家の助言を受けられないまま、住民避難を決断した。

 また、これまでの防災基本計画では、原子力事業所での事故のみを想定していたが、「不測の事態に備える」という計画の基本方針に従い、初めて核燃料運搬中の事故も想定した対応を記している。

 このほか、米軍原子力艦船が寄港する横須賀市などが求めていた原子力艦船を想定した防災計画の策定については、「関係自治体の防災計画において、その対応に留意するものとする」として、自治体が地域防災計画を作る場合に協力する姿勢を初めて示した。

 米軍艦船については、「原子力艦船の事故は起こりえない」との認識から、原子力災害法の対象から除外されており、横須賀市などはこれを不満として独自の計画策定を進めていた。政府が従来の方針を転換したことで、今後、自治体との間で具体策の協議が進む見通しだ。

(読売新聞 2000−5−12)

2000年5月8日

北海道幌延町の「核抜き」条例案、11日に提案

 核燃料サイクル開発機構の深地層研究所(仮称)の誘致を進めている北海道幌延町は8日、研究期間中及び終了後に、町内に放射性廃棄物の持ち込みを認めないとする「核抜き」条例案を発表した。11日の臨時町議会に提案する。科学技術庁によると、「核抜き」条例が制定されると、同様の計画がある岐阜県土岐市などを含めて4自治体目になるという。

 ただ、放射性廃棄物の定義や違反した際の罰則などは盛り込まれておらず、「宣言的条例」の色合いが強いともいえる。町は今後、核燃機構や北海道を交え、罰則や立ち入り調査などの細かな協定を結びたい、としている。

(asahi.com 2000−5−8)

2000年4月27日

東海村臨界事故で被ばくのJCO職員篠原理人さんが死去

 茨城県東海村のウラン加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で、昨年9月30日に起きた臨界事故で大量の放射線を浴びた同社員、篠原理人さん(40)が27日午前7時25分、入院先の東京大学付属病院(東京都文京区)で亡くなった。事故から211日目。死因は、被ばくによる多臓器不全だった。推定被ばく線量は致死量を超えるとされる6―10シーベルトだったが、最先端治療を受けて、年明けからはリハビリを始めるまでに回復。 しかし、呼吸機能が低下、容体が悪化していた。同事故の犠牲者は、昨年12月に死亡した同社員の大内久さん(当時35)に次いで2人目となった。

 篠原さんらは事故当日、3人でウラン濃度を均一にする作業をしていた。原子力安全委員会によると、篠原さんは大内さんととも に、ウラン溶液を沈殿槽に注ぎ込んでいた。溶液を大量に入れたため、核分裂反応が連続して起きる臨界になった。

 篠原さんは、発生した中性子線などに被ばくし、全身に放射線やけどを負った。免疫にかかわるリンパ球が大幅に減った。病原体への抵抗力を失った。

 東大医科学研究所病院(東京都港区)に入院し、リンパ球などをつくる機能を補う「さい帯血移植」を受け、造血機能は徐々に戻った。体の約7割におよんだやけども、皮膚移植で一時は回復した。車いすを押してもらいながら病院内の廊下を移動できるまでになった。

 ところが、3月1日にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染とみられる肺炎で、急に呼吸が不安定になった。胃からも出血があった。4月10日、大内さんの治療にあたった東大病院に 転院。その後、呼吸機能が著しく低下して、腎臓や肝臓の状態も悪化し、同病院は「多臓器不全の状態に陥った」と発表していた。

(asahi.com 2000−4−27)

2000年4月3日

横須賀の米空母は「核の傘」 米当局者が明言

 米海軍横須賀基地(神奈川県)を米空母ミッドウェーの拠点とする前年の1972年にあった日米協議で、米政府当局者が大平正芳外相(故人)に対し、横須賀に出入りした米空母は「日本のための核の傘の非常に重要な一部」と明言したとする米政府の機密文書が、米国立公文書館で発見された。文書は、そのうえで、米艦船の一時寄港などは核搭載をめぐる事前協議の対象外と了解 したとされる、63年の大平外相・ライシャワー駐日大使の協議を引用。実際には母港化なのに「寄港が増える」 だけだとして、米政府はミッドウェーの核搭載の有無が事前協議の対象外であると伝えたことを示した。米空母による核持ち込みが極めて色濃くなった。
 この文書は72年8月、ハワイであった大平外相とジョ ンソン国務次官の会談の内容を報告した。秘密指定されていたが、その後、米国立公文書館が公開し、在日米軍の実態などを調査している市民団体「ピースデポ」の 梅林宏道代表が見つけた。
 文書は、冒頭の部分でジョンソン次官の発言を記録。 同次官は「ベトナム戦争前、米国は3隻の空母を西太平洋で維持していた。これは日本のための核の傘の非常に重要な一部だった。以前はこうした空母は横須賀基地に寄港し、出入港を繰り返した」と述べた。
 米国は艦船の核搭載を「否定も肯定もしない」という政策をとっていたが、「核の傘」という表現で、少なくとも60年代前半の核搭載空母の日本入港に言及している。
 そのうえで、次官は、少数の空母を西太平洋で効率的に運用するために、横須賀を空母の母港にしたいと提案 した。その際、乗組員が家族と頻繁に会えるように、軍人の家族を横須賀地区に居住させるが、空母の寄港数がこれまでよりも増えるだけだと説明した。
 さらに、次官は「63年の大平外相とライシャワー大使の協議に基づく限り、状況は少しも変わらない。艦船を日本に配置するわけではない」と発言した。

(asahi.com 2000−4−3)

2000年4月1日

延伸準備着々に警戒感

◆横須賀基地12号バース/土壌汚染拡散を懸念

 空母など大型艦船の停泊に備え、ふ頭の延伸計画のある米海軍横須賀基地12号バースをめぐり、横浜防衛施設局が海上部分に延ばす桟橋の設計業務を都内の業者に委託していたことが、三十一日までに分かった。同バースでは、同所で検出された汚染土壌の処理対策工事が昨年十二月下旬に始まったばかり。着々と進められている延伸計画に、地元の市民団体は「原子力空母の母港化を急ぐ動きではないか」と警戒している。
 同基地12号バースは、空母など大型艦船の停泊場所として使用されてきた。しかし、ふ頭の長さが不足し、艦船の係留、補給などに支障があるとして、米軍の要求により、現在の二百七十七メートルから四百十四メートルへ伸ばす工事が計画されている。
 同バースで現在行われている汚染土壌対策工事は、同所で検出されたヒ素や水銀などの汚染物質を拡散しないよう封じ込める狙いで、延伸工事の前段としての意味を持つ。横浜防衛施設局は「昨年十二月の着手後、対策工事は順調に進んでいる」とし、二〇〇一年度半ばに完了する見通しを示してる。
 同局はこれと並行し、三月初旬、ふ頭延伸に絡む桟橋の設計業務の入札を実施していた。同局によると、設計委託したのは海上部分に設置する長さ約百三十メートルのくい式桟橋で、都内のコンサルタント会社に約二千八百万円(税込み)で委託が決まったという。
 委託期間は今年十二月下旬までで、財源は一九九九年度予算に盛り込んでいた「提供施設等整備費」、いわゆる「思いやり予算」という。ただ、同局は現在のところ、実際の桟橋工事分の予算要求はしておらず、「桟橋工事は港湾法に基づく横須賀市との協議を経て、現在の汚染対策完了後に着手する」 としている。
 一方、地元市民団体は、設計着手の動きに警戒感を強めている。「NEPAの会」の呉東正彦弁護士は「国は桟橋延長部分の海底土砂に汚染はないとしているが、くいを打つ岩盤層の調査はしていない。 岩盤層からはヒ素などの検出が推測され、工事による汚染拡散の危険性もある。現段階では桟橋の設 計すらすべきでない」と指摘する。
 また、同会などはふ頭延伸を将来の原子力空母母港化への布石とみており、今回の設計着手も「原子力空母の母港化を一日でも早く実現しようとする動きではないか」と警戒している。
 これらについて、同局は「延伸工事をいつまでに終えなければならないという完了期限の指示は受けておらず、米軍との約束もしていない」とした上で、「横須賀市と十分に協議し、環境に配慮した工法を採用するなどの対策を講じていく。原子力空母との関連は、まったく念頭に置いていない」としている。

(神奈川新聞ホームページ・2000−4−1)


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