意見陳述                                   新倉裕史  請求代表者の新倉と申します。  本条例案の審議に際して、意見陳述の場を設けて頂いたことに、心から感謝申し上 げます。そして、本請求を実現するために、1ケ月間署名集めに奮闘された4000 人の受任者の皆さまに、この場をお借りして、あらためて厚く御礼申し上げます。 1)安全性について  最初に、横須賀市の安全対策の取り組みについて、意見を述べます。  横須賀市は昨年夏、「原子力空母安全安心対策説明会」を開催しました。市内10 ケ所で開催された「説明会」では、市の担当職員が、根拠となる技術データを示すこ となく「安全です」を繰り返すばかりで、参加した市民の多くは、「安全安心」の手 がかりを得ることなく、不安と疑問は増すばかりでした。  「説明会」では、原子力艦船に関連する被曝事故が、すでに数件起きているという ショッキングな報告がありました。米海軍から知らされている、と担当者は言いまし た。  なぜそのような重要な事実が、市民に公表されなかったのか、という質問には、明 確な説明はありませんでしたが、米海軍に、さらに詳細な情報の提供を求めることが、 参加した市民に約束されました。  それから8ヵ月がすぎようとしています。いまだに、米海軍は詳細な情報の提供を 拒否したままです。どんなに小さなことでも情報提供がある、とされた「原子力防災 協定」。協定で約束されたことが実施される根拠として、米海軍との「信頼関係」が 繰り返し強調されますが、信頼関係の中身が、ここにはっきりと示されています。 2)市民との信頼関係は必要ないのか  横須賀市は、米軍との信頼関係を強調する一方で、市民との信頼関係を築くことに はあまり熱心ではありません。「説明会」に参加した市民が連名で提出した再質問に、 横須賀市は「回答しない」と言ってきました。市民との公開討論会も拒否しました。 それもたった1本の電話でです。  ケリー在日米海軍司令官は、横須賀市民の原子力空母の安全性に関する根強い疑問、 警戒心があるから、米軍も一生懸命になっていると、あるテレビ番組で述べています。  市民の強い関心、厳しい意見こそが、横須賀市の「安全対策」を根底から支える力 となっていることを、司令官は語っています。  原子力空母の配備を受け容れた責任の重さを真剣に考えれば、こうした市民の強い 関心、厳しい意見を背景に、米海軍に毅然とした態度で望む、という姿勢が選択され るべきと思いますが、なぜか、蒲谷市長にはその気がありません。  市民の声は、そんなに当てにならないものですか。市民の意見は、なんの力にもな らないとお考えなのでしょうか。   3)専権事項  蒲谷市長は、本条例案に対する意見書で、「このような事案を処理するは、憲法7 3条の2で国の役割と規定されており、外交関係の処理に係る国の決定に地方公共団 体が関与し、あるいはこれを制限するようなことは、地方公共団体の機能の行使とし ては認められない」とお書きになっています。  憲法73条は内閣の一般行政事務以外の事務について述べ、2で「外交関係を処理 すること」をその事務の一つとして掲げています。しかし、この規定は国の三権(立 法、行政、司法)関係における行政(内閣)の職務範囲を定めたものであって、国と 自治体との間の権限配分を定めたものではありません。憲法のこの規定をもって、直 ちに原子力空母の配備に関する一切の事務から自治体を排除するという結論は導き出 せません。  原子力空母配備についての最終決定権は、蒲谷市長がおっしゃるように横須賀市に はありません。しかし、日米両政府の合意と、その合意によって生じる市民生活の不 安を、横須賀市がそのまま受け入れるかどうかは、まったく別の問題です。  さらに、本条例案が求めているのは、「外交関係の処理に関する国の決定の制限」 ではなく、「外交関係の決定」によって直接の被害を被る市民が、この町の主権者と して意見を言う場を、法的に確保して下さいということです。  市長は、どうしてこのかんじんなところを、理解しようとしないのですか。 4)蒲谷市長の公約  国の専権事項である基地問題に、どう立ち向かうのか。これが、この町の首長に求 められている基本姿勢です。安保容認であれ、基地の役割に理解を示す立場であれ、 このことは誰にでもあてはまる、この町の一般原則です。そうでなければ、基地の町 の様々な重圧から、市民を守ることができないからです。  それなのに、「国の専権事項」だからと、この問題から逃げて、どうして市民を守 る横須賀市の行政が成立するでしょうか。「国の専権事項」ではあっても、言うべき ことは言う、という理解があるからこそ、蒲谷市長は、立候補の際、「原子力空母の 配備反対」を掲げたのではないですか。  にもかかわらず、原子力空母の配備を目前にした、この重要な時期に、「専権論」 をふりかざすのは、市長自らがこの問題についての自治体の関与に制限を加え、米海 軍に「どうぞお好きなようにしてください」と言うに等しいことに、ぜひ気が付いて 下さい。  13日の議会で、「通常型空母のみ受け入れるという公約にもかかわらず、原子力 空母を受け入れたから直接請求につながったのではないか」という質問藤野議員に、 市長は「米軍が通常型を造らないといっているのだから仕方ない」と答弁しました。  「通常型であること」は横山市長時代から、空母の横須賀母港を受け入れるための 条件でした。その条件を整えることができなくなった、すべての責任は米海軍にあり ます。であるなら、つけのすべては、米海軍が甘んじて受けるというのが、ことの道 理です。「条件」とはそのように機能するものです。  米海軍は空母の横須賀母港の条件を整えられない。ではどうするか。市民と一緒に 考え、市民と一緒に結論を出すという道を、なぜ選択できないのですか。 5)ふたつの反対決議  市議のみなさん。横須賀市議会は、過去2回にわたり、全会一致による原子力空母 母港反対の決議を行っています。  横須賀市議会の、原子力空母の配備についての明解な姿勢に、市民は声援を送り、 期待をしてきました。今も、その期待に変わりはありません。  しかし、残念なことですが、市民の期待を無視して、もはや通常艦の選択肢がない、 という1点で、2つの意見書に逆行する動きが始まってしまいました。  状況が変わったと説明されています。ほんとうにそうでしょうか。米海軍の空母の 建造計画をみれば、通常空母の選択肢がなくなる日が、いずれ来ることは、誰にだっ て容易に推測できることです。そうした日が来ることを前提に、情勢の変化に左右さ れないためにこそ、決議は行われたのではないでしょうか。  05年2月22日、原子力空母横須賀母港反対決議。8ヵ月後の05年11月2日 の原子力空母横須賀配備合意撤回を求める意見書。  このふたつの決議は、みごとに状況の変化に対応しています。全会一致で採択され た、横須賀市議会の全体意志には、時間の経過に耐えうる決意が注ぎ込まれているは ずなのです。  意見書は、直接的には政府へ向けての発信です。しかしそれは、同時に市民へ向け た、市議会の政治姿勢の表明であり、市民への約束でもあります。市民が期待を込め て見守った、ふたつの決議を、なかったものに等しく扱い、コマを進めるのであるな ら、どうぞ、市民の意見を聞いてからにして下さい、というお願いは、そんなに理不 尽なお願いなのでしょうか。  6)なんで1万筆以上も署名が増えたのか。  第2次の署名活動に取り組みにあたって、多くの方から、2度目はむずかしい、と いうご意見をいただきました。  それでも8月配備を前にして、止むに止まれぬ思いで、スタートした第2次の署名 でした。  受任者は倍近くに増えました。4000人以上の市民が署名簿を持ち、町を歩きま した。1筆の署名をいただくために、どれだけの言葉が交わされ、どれだけの思いが 行き交ったのか、ぜひ想像してみて下さい。  たくさんの言葉が交わされ、たくさんの思いが行き交って、署名数は1万筆以上も 増えました。  5万筆の署名には、この町の主権者である市民の自覚が、みごとに立ち上がってい ます。  署名数が1万筆以上も増えた理由を考えて下さい。原子力空母の不安。自治意識の 向上。あきらめない思い。あるいは、わたしたちもまだ気が付いていない、もっと大 きな理由があるかも知れません。  署名数の増加の背景を考えるために、ひとつのデータをお示しします。前回の否決 直後に行われた市民アンケートの結果です。  65%の市民が原子力空母の配備に不安を感じていました。同じく65%の市民が 配備に反対と答えました。しかし、なにより注目していただきたいのは、74%の市 民が、住民投票をすべきだと答えた点にあります。反対と答えた市民より9ポイント も上回った回答のなかに、この町の大きな変化があります。  クロス集計によって、配備に賛成と答えた市民の過半数、52%が住民投票できめ るべきだと答えていることがわかりました。  住民投票イコール反対派の取り組みという判断が、いかに短絡的なものであるのか お分かりいただけるでしょうか。  賛成でも反対でも、この町の重要な問題は、市民が一生懸命考えて、市民が責任を 持って答を出そう。そうした市民参加と自治意識の高揚は、地方政治に関わる皆さん が、誰よりもまっ先に歓迎していただける事柄のはずです。   7)町づくりアンケート  何年か前の日本経済新聞に、住みたい町、住みたくない町のランキングが掲載され ていました。横須賀は住みたくない町の8位。基地の存在が住みたくない理由です。  でも私たちはこの町で暮らしています。自分が暮らす町を、少しでもいい町にした いと思いながら、この町で暮らしています。だから、原子力空母の配備という大問題 を、素通りするわけにはいかないのです。このままでは、横須賀はさらに住みたくな い町となっていきかねない。そうした危機感があるからこそ、市民の意見を示す機会 を求めているのです。  横須賀市の町づくりアンケートによれば、市民の82%が、この町のイメージを 「基地の町」と答えています。ところが、将来の横須賀市のイメージはの問に、「基 地の町」と答えた市民はわずか4%です。圧倒的多数の市民が、基地の町ではない横 須賀を、思い描いて暮らしています。  市民は、「基地の町の宿命」の重圧に屈していはいません。市民はこの町の「明日」 を自分達の意志で描きたい。そう思っています。  市議の皆さん。住民投票条例に賛成して下さい。市民が意見をのべる機会をつぶさ ないで下さい。お願いします。  以上で私の意見陳述を終わります。ありがとうございます。