意見陳述                三影憲一 (1)安全対策 何千人もの横須賀市民が働く横須賀基地の実情 @原子力空母配備計画容認の当初から国は具体的な根拠も示さず「絶対安全で事故はない」と断 言する一方で、「もし事故があっても被害は基地内にとどまる」という見解を繰り返し、常時 基地で働く従業員・契約業者を含む7千人とも言われる横須賀市民の神経を逆なでしてきまし た。市民でもある基地従業員の多くは、国は信用できないが直接の市民を抱える横須賀市なら 国から具体的な安全策を引き出してくれると一縷の望みを託していましたが、1年後の今、結 局健康被害に関わる具体的な安全検証策など何一つ形にされないまま、単に配備計画だけが進 んでいく現実に直面しています。基地の日本人の間には、私たち基地で働く者は最初から捨て 石だったのかという、あきらめに似た無力感が広がっています。 A放射線は目に見えず、煙も炎も異臭もなく、建物を突き抜けて到達し痛みも外傷もなく細胞を 破壊します。あえて原子力艦災害・爆発事故とは言いません。平時や日常の安全性はどう担保 するのでしょうか。決して個人ごとの被曝線量の蓄積を問えない一般的なモニタリングをたと えいくら強化しても、健康被害の予見には何の役にも立たないことは、誰にでも解るはずです。 モニタリングは漏洩や事故の発見にはつながりますが、そこにいる人々はひとりひとり身体を 持った人間なのであって、遠くから十把一絡げに観測される環境の一要素ではないのです。 B公けにはされていませんが、現行の原子力潜水艦に関しても、業務命令により、あるいは放射 線立ち入り制限だと知らされることなく、原子力潜水艦の業務に赴かされるというのが、基地 従業員の偽らざる実態です。現実にそうした作業に従事していた従業員の中に白血病で亡くな った従業員もいます。確かに必ずしも業務が死因の因果関係ではない可能性はあります。しか しもしアスベスト被害と同じように断続的な微量の放射線被曝の蓄積が原因であったとした ら、どうでしょうか。10年後20年後、もし横須賀基地の発ガン率や白血病発症率が他地域 の数値を大きく上回っていたら、どう責任を取るつもりでしょうか。あるいはもっと広くサン プルを採ったとき、横須賀市全体の発症率が他市を明らかに上回っていたら、いったいどう因 果関係を検証し、誰がその責任を取るのでしょうか。その時は、何も適切な安全対策を採らな かった今の市当局による「人災」と言われても仕方ありません。 C市長も議会のみなさんも、7千人もの市民を基地に置き去りにして、形ばかりの米軍との共同 防災訓練や10年間で70億円の特別交付金上積みを成果として強調されますが、こうした健 康となんら関係のない些細な進展を口実に、具体的安全策さえないまま原子力空母配備を容認 するとしたら、市民の安全を最優先に守るべき自治体公務への背信であると思います。 (2)民意の検証 横須賀市は市民の思いに耳を傾けようとしていない @二重三重に安全という国内原子力安全神話は相次ぐ人災・天災・事故隠しでとうの昔に破綻し ています。近年では、マンション耐震偽装・食品偽装・年金記録廃棄から、環境意識の高まり に乗じた業界ぐるみの古紙配合偽装に至るまで、あらゆる規範と危機管理がでたらめであった ことが次々と明るみに出ています。社会への信頼が非常に深く傷付いているこのような時代に、 「国が保証したから安全」、まして「米軍が安全と言っている」などといった説明で人々を納 得させようという安易で官僚的な発想こそが、さらなる市民の反発を招き、二度目の署名活動、 そして前回を30%も上回る署名の集約に結びついているのだということを、市当局と議会は、 真摯に受け止めるべきだと思います。 A原子力空母は断じて安全ではありません。構造的な問題ではありません。原理的な問題でもあ りません。兵器だからでもありません。それ自身が一切の情報を公開しない軍事機密であり、 日米地位協定で保証された治外法権と、どのみち日本の法令と主権には属さないという二重三 重の、鉄壁の情報非公開原則に固く閉ざされている限りにおいて、その存在自体が危険なので す。そして多くの市民は無意識のうちにそのことを解っているがゆえに、市当局のこれまでの 説明は、ことごとく虚しく上滑りなものにしか聞こえず、いつまで繰り返しても市民の納得が 得られないのです。 B横須賀市は昨年秋に多額の公費を投入して、原子力空母は安全です一辺倒の広報特集版を作 り、新聞折り込みをしました。消化メニューのように、地区ごとに分割して何度か紋切り型の 答弁に終始する説明会を開催しました。にも関わらず、しかもおそらく市当局や議会から前回 同様一蹴されると解っていても、前回を超える5万人にもおよぶ市民が署名をしたのです。何 度却下しても解らない5万人の市民は頭が悪いとでも言うのでしょうか。住民投票がこの種の 問題になじむかどうかは問題ではありません。重箱の隅をつつくような文言の不備や手続き上 の問題を指摘する前に、この署名自体が事実上住民投票の性格を帯びているとなぜ考えてはい ただけないのでしょうか。その重い市民の行動の結果を、正面から受け止めてほしいと思うの です。 Cたとえば住民投票ではなくて、どういう手法だったらなじむのでしょうか。当局の見解の押し つけではなく、全体的な住民の意識調査なり、民意の検証なり、まっとうな対話と合意形成の 試みが、この間たとえ一度でも、市当局はさておき議会の自立性を発揮してでも発議されたで しょうか。少なくとも市民の思いに叶うアクションは、何一つ市役所のこの建物からは発信さ れて来なかったのではないですか。そのうえ前回署名提出以後、具体的な安全策さえ何一つ示 せていないということになります。 D市役所は国の出先機関ではないはずです。市議会は、市当局の単なる評議機関ではないはずで す。住民投票条例案の不備を指摘し、請求を却下するのは簡単ですが、その前に、自らが本来 なすべきことをしてきたか、横須賀市が万全の安全策や市民の意見の咀嚼をしてきたか、おひ とりおひとりが今一度、自問自答していただき、自信を持って「してきた」と言えるなら、否 定していただいてもけっこうだと思います。 E仮に住民投票が制定されて実施され、仮にNOの民意が明らかになったとしても、確かに空母 配備の方針は動かせないかも知れません。国は飴と鞭の年7億円の交付金をお預けにする暴挙 に出るに違いありません。しかし、そのような経緯を経て、原子力空母の情報公開や具体的安 全策というものは初めて大きく前進するものなのかも知れません。そしてそうした具体的な安 全策や情報公開の前進が突破口となって、地方自治権を損ない米軍の治外法権を許している時 代錯誤的な日米地位協定にも風穴を開け、抜本的に見直すための契機になるかも知れないので す。何よりも、横須賀市の民度と市民の活力は飛躍的に高まるはずです。そして、こうしたこ とすべては、決して金銭に換えがたいもののはずです。市民の代表であるはずの議会のみなさ んが、大いなる想像力を持って、この私たちからの問題提起を考え正面から受けとめていただ けるよう、願ってやみません。 - 1 -