原子力空母の横須賀配備及び安全性を問う住民投票に関する条例 臨時市議会意見陳述 2008年5月15日 共同代表 小林麻利子  共同代表の小林と申します。市長ならびに議員の皆様、また職員の皆様、2度にわたる住民投票 に関する条例案の審議のために時間を割いていただき、ありがとうございます。また、再度発言の 機会を与えていただいたことに感謝いたします。  私は、前回に続き、共同代表をさせていただいておりますが、私よりももっと適任な方が他にい らっしゃったのではないだろうか、共同代表としてもっと何かできたのではないだろうかと、本当 に力不足を感じております。でも、今回受任者を引き受けてくださった方々の、素朴だけれども熱 い想いである「原子力空母の問題は、おおぜいの市民で考えるべき問題なのだ」という、横須賀市 民としての想いをこの場を借りて伝えることが今回の私の役割と考え、ようやくこの場に立つこと ができました。また、法律や原子力問題の専門的知識などはないけれども、住民投票をしたいとい う、署名をしてくださった一般市民の方々の思いや疑問などをできるだけ代弁したいという立場で 意見を述べさせていただきたいと思います。論点の根拠など、不足しているところがあるかもしれ ません。しかし、私は、自治体の活性化は、誰か一部の人にお任せではなく、できるだけ大勢の市 民の参加の質と度合いに裏打ちされるものだと考えておりますので、不足している部分は、今後も 調べていく、または知っている市民が補足していく、そのようなネットワークが広がり、市民の自 主的な活動が発展していくことを、今後も行政や議会が応援してくださることと信じていますので、 ご容赦いただきたいと思います。 1.13日の本会議を傍聴して  まず、はじめに13日の本会議のありようについて述べさせていただきます。市長の住民投票条 例の制定は必要ない、という意見が付された住民投票に関する議案に対して、質問にたった議員か ら、市長は、2度も直接請求を出された責任を問われました。市長のご答弁は、自分にはなんら責 任はなく、前回否決をしたのは議会であるし、今回も決めるのは議会である、というものでした。 3人の議員から同じことを聞かれながら、市長は同じ答弁を淡々となさいました。  さて、責任を丸投げされた議員の皆様はどのようにお感じになったのでしょう。市長は選挙で選 ばれた議員の採決の結果は市民の総意である、ともお答えになっていましたが、それが市民の総意 であるならば、この2度目の直接請求はなかったのではないでしょうか。2007年の市議選の投票 率は52%で決して高くはありません。行きたくても行けなかった方もいらっしゃるかもしれませ ん。現職候補は全員当選しましたが、前回の住民投票条例案に賛成していただいた議員の獲得票の 合計は、77,864票で、有効投票数は181,299票。つまり前回反対した議員の合計票数は、103,435 票にすぎません。その時の有権者数は349,183人で、人口は421,180人でした。直接請求は法に 基づいて選挙権を持った市民の署名しか有効にならないわけですが、原子力空母の影響を受けるの は、赤ん坊から高齢者まで、すべての市民です。さらに、横須賀市では米軍基地の存在に付きもの の米兵犯罪の犠牲者となるのが、市民だけとは限らないことが現実となっています。しかも、原子 力空母になってしまえば、放射能被害は、若い世代の方が大きな影響を受けます。それなのに、若 い世代は、直接意思表示もできない状態なのです。欧米のように日本でも18歳以上に選挙権があ れば、直接請求の署名数は、もう少し増えたことでしょう。ですから、今回も住民投票条例案は若 い世代の考えもこの問題に反映されるよう、18歳以上であれば投票できるようになっています。 人権都市宣言を行った横須賀市が、今後、この横須賀市のまちづくりを支えていく世代の意思表示 の場を保障しなくていいのでしょうか?  そして心配なことが他にもあります。議員の皆様はご存知のことと思いますが、横須賀市は、人 口がどんどん減っているのです。5年前の平成15年4月1日の人口は429,135人でもう少しで43 万人都市と言えるものでした。しかし、今年4月1日現在の人口は419,821人で、5年前よりも約 1万人も減少しているのです。この減少率は、平均並みなのか、高いのか低いのか、わかりません。 本市は、前市長のときから、交流人口を増やすことで、定住人口の増加につなげるという施策を打 ち出しています。しかし、今のところ効果は出ていないようです。今回も市民の想いを受け止めず に、なんの手立てもせず、単に条例案を否決してしまえば、さらに人口減に拍車がかかるのではな いでしょうか。なぜならば、健康や環境問題に関心が高まっている傾向のなか、原子力空母がある まちで、子育てをしたいと思って定住する人が増えるとは、普通に考えればありえない話だと思え るからです。 2.安全対策について  次に安全対策について述べたいと思います。市長は、条例制定の必要がない理由を、住民投票自 体の目的が国の専権事項に関わるものだからと前回から一貫した結論をお持ちのようです。議員の 皆様、私たちの住民投票の条例案を最初から最後まで読んでいただけましたでしょうか?前回には なかった、安全性について説明や情報公開が十分と考えるかどうかを問う投票方法の条文が入って います。一度否決されたにもかかわらず、再び住民投票条例を求める今回の直接請求の署名数が、 前回よりも1万筆以上も上回ったことは、原子力空母の配備に関して本市の安全対策に不安を抱え ている市民がたくさん存在する証ではないでしょうか?これはぜひ、議員の皆様に胸に刻んでいた だきたいことです。  議員の皆様、皆様の中には原子力空母の配備は、日米政府が決めたことであるから、市長のおっ しゃるとおり住民投票で決めることではないとお考えの方が多いことでしょう。しかし、原子力空 母が配備されるのは、他のどこでもない、42万人都市の私たちのまち、この横須賀なのです。市 民が、動く原子力発電所といわれる原子力空母に、多くの不安を持つのは当然のことではないでし ょうか。原子力発電所でさえ、あるよりないにこしたことはなく、しかも原子力発電所の建設なら、 国内法で安全対策が非常に厳しく課せられることが、完全ではなくても、市民にとっては不安を取 り除くための方策となっています。しかし、原子力空母の場合、軍事機密を盾に米軍が情報公開し ていないことも、国が独自の検証をしていないことも事実として存在しているのです。市民の不安 はそこに根ざすものです。市長は、その市民の不安を受けとめようとせずに、対策は十分成果を挙 げてきたし、情報公開も十分であると本会議で述べられました。完全にくい違っています。市民が 不十分ではないかと言っているのに、なぜ十分と言い切れるのか、多くの市民が理解に苦しむとこ ろではないでしょうか。  議員の皆様、思い出してください。前回の条例案の採決の際、反対した議員の方々の中にも安全 対策は重要だという意見をお持ちの方がたくさんいらしたと思います。それは、横須賀市を故郷と 思う市民の一人として、また有権者の代表として、市政を預かっていらっしゃる自負があるからこ そ、そのようにお考えになられたのでしょう。横須賀市議会として、原子力空母母港化に反対した 決議書は、もう無効なのでしょうか?いいえ、あの理念は、皆様が横須賀市民である限り生きてい るのではないでしょうか。ですから、お願いです。もし、今回の条例案を否決するならせめて、市 議会として、各方面の専門家を集め、独自にこれまでの安全対策を検証する機関を設置することを 対案として出して下さい。例えば、今後起きるとされている南関東大地震の際の12号バースや関 連施設の耐震性について、最大規模の地震が起きたとき、被害の予想や市民への影響について、こ れは時間帯を細かく分けて考える必要があります。基地周辺は、学校や福祉施設もあるわけですか ら、通勤・通学時間に起これば被害は大規模なものになります。中国で起きた大地震は、決して他 人事ではありません。空母は海の上だから、地震の被害も波に軽減されるという説明ももう一度検 証して下さい。残された時間はあと100日もありません。目の見えない方、耳の聞こえない方、手 足が不自由な方には、どのように対処していただけるのかも含めて、市民への広報は、もっと丁寧 に行ってください。   3.基地についての議論を深めることについて  13日の本会議で、佐久間議員から、会派として原子力空母だけに特化せず、米軍基地について 議論を深めることが必要ではないかという問題提起がされました。確かに神奈川県は沖縄県に次ぐ 基地県であり、さらに横須賀基地は、米海軍の戦略上、非常に重要な拠点です。それなのに一般的 には私たち横須賀市民は、今まで空母の艦載機の爆音に悩まされることもなく、また夜間に米兵の 行動範囲に足を踏み入れさえしなければ、基地の存在をそれほど「負」と意識することもなく、暮 らして来られました。しかし、もうそういうわけにはいきません。長引くイラク戦争がもたらすも のかどうかわかりませんが、ときを同じくして、米兵によって市民が殺害されたり、暴行されたり する重大事件が頻発しているせいもあります。佐久間議員の会派の、基地について議論を深める提 案に、市長はその仕組みを検討していくとお答えになっていました。真の目的を何とされ、そのよ うな提案とそのようなお答えがされたのか、不安に感じたのは私だけでしょうか。議論すれば、当 然基地必要論と不要論と、また、どちらともいえないというのがあるかもしれませんが、そのよう な議論が出てくるわけです。現在、日米同盟が漂流していると言われていますが、国のために日米 同盟に貢献すること、そしてそのご褒美として米軍再編交付金を当てにしなければならないような 本市の財政状況も根底にあるのではないでしょうか?普通に考えれば、世界から戦争がなくなるこ とが望ましいと思えますが、恐ろしいことに戦争がなくならないことを願う人たちも存在するよう です。戦争がなくならいことを願う人たちにとって、戦争の軍事拠点として横須賀基地は重要です。 一方、軍事という特殊な側面を取り払って、労働という観点から基地をみてみれば、横須賀基地は、 確かに働く場として横須賀を支えてきました。しかし、労働の問題は、他に働く場があれば解決し ます。基地がなくなったら、失業者が増えるというのは、何も策をとらなければの話です。今現在 基地がある場所は、横須賀市の絶好の立地に位置し、広大な面積を持っているのですから、日本の 高い技術力を活かせば、未来につながるいろいろな可能性を持つ働く場を造れるのではないでしょ うか。企業から出資を募り、さまざまな環境問題を解決する産業を生み出すことなども考えられま す。しかし、安全保障はどうするのかという声が聞こえてきそうです。それは、中国や韓国との信 頼関係を深めることが解決の糸口になるのではないでしょうか。こういうことを言うとアメリカに にらまれ、また、中国嫌いの方のアレルギーを引き起こすかもしれません。しかし、今まで以上に、 平和を軍事力に頼る考え方の方が強くなった場合、横須賀のまちはさらに危険性が増すことを避け てはとおれないでしょう。  13日、市長は、原子力空母の乗組員全員に、安全対策を求めるとも述べられました。各地の戦 争にアメリカが介入し、それを日本が支持している・・・その戦争に参加している空母の米兵は、 戦争のストレスに晒されています。そしてさらに、空母の動力が原子力である場合、そのことにス トレスは受けないのでしょうか。放射能に関して被害感情が強い特別な考え方でしょうか。しかし、 実際米軍の原子力艦船で、被爆事故は起きているのですから。  議員の皆様、原子力空母の問題と米兵犯罪の問題は、別の問題なのでしょうか。別の問題ではな く、あきらかに関連しているのではありませんか。戦争や軍事によって、犯罪が起きる確立が高く なっているのではありませんか?    議員の皆様、この横須賀を未来につないでいくことが、皆様の使命であると思います。もちろん、 私たち市民にもその責任があります。条例案を否決するよりも、住民投票を行う方が、この横須賀 のまちの安全を、そして市民の安心を強くするための効果的な方策を国に求めていくことができる のではありませんか。  法律は市民の人権や生存権に寄与するためにあるのではないでしょうか。法律は、完全ではあり ません。だからこれまで、人によっていろいろな解釈が生まれてきました。市議会は、自治体の立 法機関でもあるはずです。横須賀の未来のために、議員の皆様の英知を活かしてください。よろし くお願いいたします。  最後になりましたが、受任者の方の思いを1つ紹介させていただきます。  「・・・今回の署名活動をとおして感じたことがある。それは勇気をもって話すことができたら、 6割の人は話を聞き、理解してくれると感じたことだ。先入観を持たずに接することが大切だと思 った。また、「原子力空母」を本気で賛成する人はほとんど存在しないということだ。無関心なの ではなく、ことの本質をつく情報を得る自前の手立てを持っていないという事実である。・・・中略  この署名に応じてくれた人たちの周囲に同じ数だけの人が待機している。この市民の思いを市議 はしっかりと受け止める責任がある。「安全が重要」と言っている市議は、その安全を担保するた めに今までどんな発言と行動をしてきたのかを公的な立場で堂々と主張してほしい。そして、市民 の安全を守っていくためにこれからはどんな発言や行動をしてくれるのかを私たちはしっかり見 守っていきたいと思う。」  これで私の意見陳述を終わります。ご静聴ありがとうございました。